【パパファイル スペシャルインタビュー】
夫婦で助け合える子育て&出産後のパートナーシップ
今回は、横浜市内で父親育児講座の講師として活躍し、「パパライフサポート」(https://papalife-support.amebaownd.com/)の代表を務め、四人の子どもの父親でもある池田浩久さんにペシャルインタビューを行いました。夫婦で助け合える子育て、パートナーシップを良好に保つためには、一体どのようなことが大切になるのでしょうか?
- ヨコハマダディ>>
- 今日はどうぞよろしくお願いいたします。
- 池田>>
- こちらこそ、よろしくお願いいたします。
- ヨコハマダディ>>
- 池田さんは現在、パパたちの育児を支援する「パパライフサポート」の代表を務めていらっしゃいますが、このような活動を行うようになったきっかけはあるのでしょうか?
- 池田>>
- 元々、育児には興味がありました。2011年に育休も取得し、その時に横浜市が開催していた「イクメンスクール」にも通いました。実際に講座に参加してみると、自分は育児に積極的だと思っていたけれど「まだまだできることがたくさんあったんだ」と驚いたことを覚えています。
一番のきっかけになった出来事は、2011年のGW。休み期間中に連日、子どもの面倒を自分ひとりだけで見た時です。1歳の長女をベビーカーにのせて外出したのですが、パパがオムツ替えを行える場所が当時はほとんどありませんでした。
赤ちゃん休憩室は授乳室と兼用になっていると男性は入れないし、自分がトイレに行きたくなっても、男性トイレにはベビーキープなどもない状態で……。極限までトイレに行くことを我慢していました。
- ヨコハマダディ>>
- それは大変でしたね。確かに、今よりもまだパパが育児に参加するという認識が、社会全体として少なかった頃かもしれません。インフラも整備されていなかったのですね。
- 池田>>
- ある施設で、「男性がオムツを替えれる場所はありませんか?」と聞いたところ、その時はなかったのですが翌月には設置してくれたことがありました。その時に「困ったと感じたら、声をあげれば改善する可能性があるんだ。これからも、何かあったら自分から声をあげていこう!」と強く思ったんです。
そしてGWの最終日、パパ友達と子どもだけで集まってご飯を食べる機会がありました。自分がトイレに行こうとしたら、「子どもを見てるから行ってきな~」とパパ友が言ってくれて、すごく嬉しくてあたたかい気持ちになったんです。ママたちも助けられると、こういう気持ちになるんだろうなと思って。
自分だけで頑張るのはきついしつらい。助けてもらうと、嬉しい。この感覚を、もっともっとパパたちにも伝えていきたいなと思ったことが大きなきっかけです。
- ヨコハマダディ>>
- なるほど…。ちなみに当時と今を比べると、パパが育児に参加することに対する社会的な変化はありますか?
- 池田>>
- 変化はとても感じます。当時は育児に積極的な男性を「イクメン」なんて言葉で呼んでいましたが、今は言葉がなくても、父親が育児参加することが当然のようになってきていますよね。
父親育児講座を開催する場所も増えましたし、子育て世代だけでなく〝地域全体で参加する子育て〟に関心を持つ人が増えたように思います。
- ヨコハマダディ>>
-
孤独な育児がさまざまな出来事の原因にもなっていると思うので、地域の関心はとても支えになるし、重要ですね。
池田さんは〝夫婦のパートナーシップ〟に関する講座も市内で行っていますが、主にどのようなことを伝えているのでしょう?このテーマで悩んでいる方は多いと思います。
- 池田>>
- これまでの歴史をみてみても、父親が育児に積極的に参加する時代は少なかったように思います。当然のように母親が子どもをみるものとされてきたので、男性が育児を知らな過ぎるし、参加するという教育がほとんどされてきていないと感じます。だからその役割を担えるといいなと思って「パパライフサポート」を立ち上げました。
これまでに多くの講座を行ってきましたが、パパとママが家族のためにお互いに仕事や育児を一生懸命頑張っているのに、孤独を感じている場合が少なくありません。例えばパパの場合は、仕事が忙しくて育児になかなか参加できないと子どもに人見知りされたり、ママに罪悪感を感じたりして、次第に家庭に居場所がないと感じることもあると思います。
また一方で、ママは育児や仕事で疲れ悩みがあっても、パパに相談する機会がない場合も多く、次第に育児のすべてを自分ひとりで抱え込むようになることも。こうなると、子育てはとても孤独なものになってしまいます。
- ヨコハマダディ>>
- 具体的に、どのようなことをしていけば良いのでしょうか?
- 池田>>
- 子育てについて、話す時間を持つことが大切になります。実は「子育てについてきちんと話している」と思っている場合でも、会話ではなく言い合いになっていることが多くあります。
例えばパパの場合は、ママの子育てに関する悩みや愚痴を聞くと「俺ならこうする」「こうすれば解決するよね?」とアドバイスしがちな傾向があります。ママはもう十分なほど精一杯子育てしているし、子育ては仕事のタスクとはまったく違うので、大人の思い通りにはまずなりません。
パパには〝共感する姿勢〟が必要になります。 もちろん、「〜してあげるよ」という言い方も、逆の立場になって感じてみたら、「なぜ上から目線?」と嫌な気持ちになることが分かると思います。
一方、ママは自分のレベルをパパに求めがちな傾向があります。片付け、掃除、洗濯、洗い物etcをパパが行うと「なんでもっと上手にできないの」と感じることもあるかもしれませんが、パパは自分の分身ではありませんから、まったく同じようにはできません。育児に関してもパパの気持ちや意向を「自分のほうが子どもを知っている」と聞く耳をもたないでいると、結局はどんどん自分だけ抱え込んでいくことにつながります。
「わたしのほうがつらい」「俺だって大変なんだ!」とお互いの気持ちをぶつけ合い、ニーズを埋めてもらいたがることは、話し合いではなく言い合いです。こんな時「本当はどうしたい?」と自分に素直になって話すことが本来の話し合いだと思うのです。
お互いがつらくてしんどいと感じているなら、まずはそこを認識して話し合い、助け合える子育てを行えるよう、どのように協力し合うか、二人で考えていく。会話を重ねていくこと、それが一番大切です。よく「夫婦が同じ方向を向いて生きる」なんて言われますが、違う人間同士ですから、同じ方向を向くために、会話を重ねて意志疎通をしていく必要があると思うんです。
- ヨコハマダディ>>
- よく分かり合えていると思い結婚し、出産をする人も多いと思います。ですが、いざ子育てとなると、今までお互いが経験したことがないことですから、とまどいますよね。お互いにいっぱいいっぱいで、「言わなくても分かるよね」「気持ちを察して欲しい」と、暗黙の了解で相手に求め過ぎてしまう面もあるのかもしれませんね。
- 池田>>
- そうですね。男性と女性は脳の構造も違うと言われていますから、やっぱり意思疎通をしていくこと、思いやりを持ち合うことが大切だと思います。とはいえ、子育ても仕事も忙しいと、なかなか二人で話す時間を捻出することも難しかったりします。
そんな時、我が家では夕食の片付けをする時に少しだけでも話をしたり、車を運転している時に会話したり、工夫していました。子どもが大きくなると、子どもの前では子育てについての会話はしづらくなりますから、ラインなどで連絡を取り合い、話し合う日にちや時間をあらかじめ決めておくということもしています。
- ヨコハマダディ>>
- なるほど。そのほかにも、何か大切にしていることはありますか?
- 池田>>
- 「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えることを私は大切にしています。して当然、当たり前のことなんてありませんから、お互いに「〜してくれてありがとう」と伝え合うことはとっても大事ですよね。言われると優しい気持ちになりますし。話し合いや感謝の気持ちを伝えることの積み重ねで、「同じ方向を向いている」安心感が生まれていくのだと思います。
- ヨコハマダディ>>
- そうですね、それは大きな安心感になりますし、パパとママの安心感が、子どもの安心感にもつながるのだと思います。
- 池田>>
- パパの育児参加についてもう少しお話すると、最近は仕事も育児も家事も許容量を超えて頑張ろうとするパパが増えているようにも思います。男性は女性よりも、育児に関する話を気軽にできる友達を作る機会は少ないと思いますし、そもそもコミュニティを作ることに苦手意識を感じる人が多いです。悩みや愚痴を吐き出す機会がとても少ないので、溜まる一方になりかねません。
ママたちにお願いがあって、社交的になれないパパをどうか責めないで欲しいのです。ここもやはり女性とは脳の構造が違うので、ママのやり方や、よその社交的なパパと自分の旦那さんを比べたりしないでください。ママも、よそのママと自分を比べられたら嫌ですよね。そこはお互いがお互いのペースや性格を尊重し合うことが大切です。
パパがママに気を使い過ぎて抱え込んでしまう事例も増えているように思うので、パパも一人で頑張り過ぎないことがポイントです。地域の子育て支援拠点に行ったり、子育てに関する地域のサポートを活用して、パパもリフレッシュすることを大事にしてほしいです。
- ヨコハマダディ>>
- 貴重なお話をありがとうございました。では最後に、池田さんがどのような講座をされているか教えてください。
- 池田>>
- 横浜市では「父親育児支援講座」という講座の講師を担当しています。「体を使った遊びと子育て初めの一歩」「絵本の読み聞かせと仕事と育児の両立」「イライラしない子育て&夫婦のパートナーシップ」というようなテーマで行うことが多いです。
地域ケアプラザや子育て支援拠点で行っているので、ぜひ足を運んでいただけたら嬉しいです。グラフや表を使い、ワークなども行いながらさらに詳しくお話しています。パパと子どもだけ、ママと一緒に参加する講座などさまざまあります。ぜひ、活用してください。
- ヨコハマダディ>>
- ヨコハマダディの「地域のパパ講座情報」にも開催される講座の情報がアップされています。こちらもぜひチェックしてみてください。 それでは、本日はありがとうございました。
- 池田>>
- ありがとうございました。
- パパライフサポート代表 池田浩久さん
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1977年生、横浜市在住。4児の父。第1子から第3子まで一度ずつ育休を取得し産後のパートナーを支えながら家事・育児にコミット。2012年から横浜市を中心に『父親育児の楽しさを広める』活動を開始。2019年パパライフサポート事業をスタート。
詳細は https://papalife-support.amebaownd.com/ を。 - 取材・文)はやしあさみ