【パパファイル スペシャルインタビュー Vol.2】
夫婦で助け合える子育て&出産後のパートナーシップ
このスペシャルインタビューでは、横浜市内でパパ向けの子育て講座を開催したり、交流活動などに力を注いでいるパパに話を伺っていきます。パパが子育てを通して感じる喜び、夫婦のパートナーシップの在り方、子育てと仕事の両立についてのコツなど、さまざまな育児スタイルを紹介します。
Vol.2では、パパの子育てグッズを開発、販売している株式会社ワンスレッド(https://papakoso.shop-pro.jp/) の代表、半田真哉さんに話を伺いました。
- ヨコハマダディ>>
- 本日はお時間をいただきありがとうございます。
- 半田>>
- どうぞよろしくお願いいたします。
- ヨコハマダディ>>
- 半田さんは父親向けのパパ専用抱っこひもや、パパバックなどの商品を開発し販売されていますね。ほかにも、パパの料理教室などの講座も企画&開催をされていますが、なぜここまで育児に関わるようになったのでしょうか?
- 半田>>
- 我が家では、妻が第一子出産の際に大きな病気にかかってしまった経験があります。ですから、私、妻、子どもが3人揃って布団で川の字で眠れるようになるまでには時間がかかりました。
私は元々、アパレル業界で働いていて、服を通して誰かが幸せな顔になったり、喜んでくれることが大好きでした。妻はジュエリー関係の仕事をしており、出会って数年後の2011年に結婚。この頃、会社も起業しました。そして同年、妻が第一子を妊娠しました。
ですが次第に妻の体調が悪くなり、29週目で切迫早産と診断され入院。一人ではご飯も食べられないような絶対安静の状態で、点滴を打ちながら頑張ってくれていましたがそのうち片方の耳が聞こえなくなったり、顔面麻痺などの症状が出てしまい、精密検査をすることになりました。そうしたら、10万人に1人の確率でかかる脳腫瘍が見つかったのです。
- ヨコハマダディ>>
- そうだったのですね…。赤ちゃんのことももちろん心配だけれど、奥様の身体のこともとてもとても心配されたのではないでしょうか。
- 半田>>
- そうですね。起業していたことで時間の都合はつけられましたから、毎日看病で病院を訪れていました。脳腫瘍が見つかってからはお医者さんから「奥さんの命をとるか、胎児をとるか」という話まで出ましたが、病院と妻と話し合い、36週の時に帝王切開で子どもを出産することになりました。
幸い母子ともに無事で、1998gの男の子が誕生してくれました。ですが、妻の病気はまだ治っていません。数日後、手術をするために大きな病院にうつり、そこからは私が子育てをすることになりました。
- ヨコハマダディ>>
- 奥様もお子さんも無事で本当に良かったです。奥様には病気、出産、そして産後に赤ちゃんと離れ離れになってしまう出来事が一気に押し寄せたと思います。それらと向き合い、乗り越えられたというお話にたくさんの勇気をいただきます。
- 半田>>
- 誰よりも、妻が息子と一緒に居たかったと思います。産後、私の方は助産師さんに沐浴、ミルクのあげ方、オムツの取り替え方などを徹底的に教わりました。そして帰宅後、ワンオペ育児がはじまりました。私自身は出産をしていないので、身体につらさはありません。ですが、すべて初めての経験なので、次第に心の余裕がなくなっていくのが自分でも分かりました。
- ヨコハマダディ>>
- 今から10年近く前ですから、今よりも男性の育児参加はそこまで社会に浸透していなかったのではないかと思います。特にどんなことが大変だと感じたのでしょうか?
- 半田>>
- 健診に行くと「あれ?ママはなんで来ないんですか?」と聞かれ、「帰ったら必ずママに伝えてくださいね」と念押しをされたり、子どもを抱っこして信号待ちをしていたら「パパ、偉いわね〜」と言われたり、「男のくせに奥さんの尻にひかれているのか」と説教されたり…。もちろん、悪意はないことは分かっています。
ママは行きたくても健診に行けなくて、父親として当然のように息子の面倒を見ているだけなのに「偉いわね〜」なんて言われると、「私の存在って、一体何なんだろう?」と感じてしまう時期もありました。慣れない子育てで、いっぱいいっぱいだったんでしょうね。
- ヨコハマダディ>>
- 以前、ほかのパパさんからも同じようなことを伺う機会がありました。その方は産後に奥様の体調が悪くなってしまったそうで、その期間積極的に育児をされたようです。ですが行く先々で「ママは?」「子どもを見ないでパパに任せるなんて、ダメなママね」「パパすごいね」と言われることもあり、奥様のことを考えると心が痛く複雑な経験をされたと話してくださいました。
- 半田>>
- ママが行うと当然、できて当たり前のことが、パパが行うと途端にとても偉くなる。子育てにおけるママの負担とパパの存在意義みたいなものを考えさせられました。また、帝王切開で出産をしているので、「自然分娩こそが一番素晴らしい」「母乳は成長のために不可欠」などの意見を聞くと、やりたかったけどできなかった人たちもいて、さまざまな立場の人の気持ちに共感できるようになった気もしています。
- ヨコハマダディ>>
- パッと見ただけでは分からないけれど、それぞれの家庭にさまざまな事情がありますよね。我が家には成長ホルモン分泌不全、自閉症スペクトラム、重度知的障がいを抱える娘がいます。もちろん色々なことがありますが、この子のおかげで、世界を違った角度から見ることができるようになりました。
- 半田>>
- そうですね。逆境のように見える経験でしたが、その体験が教えてくれたことはとてもとても大きかったです。妊娠、出産、育児は当たり前のことではなく、奇跡の連続なのだと実感しました。その後は妻の手術もうまくいき、産後4ヵ月頃に自宅に帰宅しました。初めて家族全員で眠れた時はとても嬉しかったです。
私自身がワンオペ育児を経験したおかげで、ママたちの負担や日本の子育ての現状を体感できたように思います。今は昔とは違ったそれぞれの家族の形がありますよね。現在、専業主婦世帯より共働き世帯が上回っているそうです。
今後もっと夫婦共に育児を行う必要が増えてくると思うので、「パパのための育児グッズ」があるといいなと思いつきました。ママのものを借りると気恥ずかしく感じることもあると思うので、パパのお気に入りになるようなものを作りたいと考えるようになりました。
- ヨコハマダディ>>
- なるほど。半田さんはアパレル関係のお仕事をされていて、洋服や身につけるもので人が笑顔になることが好きだとおっしゃっていましたね。
- 半田>>
- そうなんです。身につけるもので、本当に人の気持ちは変わりますからね。140人以上のパパとママたちの意見を聞いて出来上がった「パパバック」やパパ専用抱っこひも「papa-dakko」はママがパパにプレゼントするパターンも多く、おかげさまでキッズデザイン賞も受賞しました。今は、乳幼児に必要な用品が入り、抱っこ補助具にもなるパパバックの進化版を開発中です。
予想していなかった展開で出産や子育てが進んでいきましたが、このような形で多くのパパやママたちとつながれるということはかけがえのない財産になっています。また、多くの時間子育てに関わることができて、子どもの寝返りやつかまり立ちができた瞬間に立ち会えたり、うんちの色に詳しくなったり、妻と子育ての大変さや喜び共有できたことはその後のパートナーシップにも大きく影響を与えていると思います。
- ヨコハマダディ>>
- ご家族のお写真を拝見しても、家族が幸せいっぱいなことが伝わってきます。ちなみに、パートナーシップを円満にするコツや工夫はありますか?
- 半田>>
- 実は出産直後、妻が私に「心から信頼して子どもを預ける」ということが難しかった時期があります。お互い初めての経験ですから仕方がないのかもしれません。でもその時、自身のそれまでの行動をとても反省しました。信頼は日々の積み重ねでできるものですからね…。
女性はお腹の中で子どもを育みながらママになっていきますが、男性はなかなか実感しづらいもの。ですが元々信頼関係ができていたら、産後にパートナーシップが大きくゆらぐことってあまりないのかもしれません。それまで色々なことを妻まかせにしてきたんだなぁと反省し、きちんとコミュニケーションをとることを意識しました。
すべて妻に同調するということではなく、自分自身もそこにきちんと加わりながら関わることを大切にしていきました。良いことだけでなく悩みや不安も共有しながら、伝え合い、関わり、コミュニケーションをとることが円満なパートナーシップの基本だと思います。
- ヨコハマダディ>>
- 本当にそうですね。つい「自分の方がたくさん子育てしている!こんんなにやっているのに!」と相手にイライラしてしまうことがありますが、そう思うのだとしたら、自分のその現状を相手に伝えない限り伝わることってないんですよね。自分が相手と関わり伝えるということはとても大切ですね
- 半田>>
- 悩むことって、とても重要なんじゃないかと思います。悩みがないふりをして生きてしまうと、そのうち無感覚になってしまうのかもしれません。夫婦で共に悩みながら、時には喧嘩をして分かち合い、寄り添いながら進んでいく。
そして自分たちの価値観も大切にしつつ、色々な人がいて多くのやり方やそれぞれの価値観を受け入れていく。今はたくさん情報がある時代ですが、それが自分たちにフィットしているかは分からないので、やっぱり方法論ではなくコミュニケーションが大切なのだと思います。
- ヨコハマダディ>>
- 半田さんご自身が歩まれた道だと思いますので、お話にとても重みを感じます。最後に、これからの活動について教えてください。
秋頃発売を予定しているパパバッグキャリアーモデル
- 半田>>
- はい。
「papakoso」(https://papakoso.shop-pro.jp/)では、秋頃に先ほどお話したパパバックの進化版を発売する予定です。
- また、保土ケ谷区のNPO法人「ぎんがむら」(http://www.gingamura.co.jp/)さんと一緒にパパのオンライン料理教室やパパ絵本ライブの企画や配信を行ったりもしています。さらに、私自身が「日本子育て学会」(http://www.kosodategakkai.com/)認定の子育てコミュニケーターでもあるので、今後はその知識も活用していきたいと思っています。
- ヨコハマダディ>>
- 色々と進行していますね。興味をもたれたママやパパ、ぜひ半田さんの活動をチエックしてみてください。今日は貴重なお話をありがとうございました。
- 半田>>
- こちらこそ、ありがとうございました。
- 株式会社ワンスレッド代表 半田真哉さん
-
保土ケ谷区在住、二児の父。子育て応援ブランド「papakoso(パパコソ)」運営。大切にしている想いは「Share with~」。家族と共有、親子で共有。株式会社ワンスレッド代表取締役、睡眠環境・寝具指導士、タオルソムリエ、日本子育て学会認定子育てコミュニケーター。
https://www.one-thread.jp/ - 取材・文)はやしあさみ